技術翻訳費用を抑える3つの方法

 技術翻訳 は、翻訳市場の中でも特殊で、比較的ストレートな言葉の置き換えにも関わらず、専門性が求められる分野です。ここに分類される文書のほとんどは、マニュアルやユーザーガイド、科学的文書、ジャーナル記事などで、特殊な専門用語を含むことが多々あります。これらの文書は、マニュアルとして参照しながら機械を操作するなど、そこに書かれた技術的あるいは科学的な情報を実際に利用するために翻訳されるのが一般的であるため、画像やチャート、図表、解説図などが多用されるとともに、独特なレイアウトや書式に従って書かれることもあります。

技術翻訳で手間のかかる作業は

技術翻訳をする際には、気を付けなければならないことがいくつかあります。

  • 英語では通用する業界独自の専門用語、略語、頭字語などは、うまく他の言語に翻訳できないことがあります。これはターゲット言語がアルファベットを使用していない場合に顕著です。これらの言葉をそのままターゲット言語でも使えれば便利かつ翻訳時間の削減になりますが、状況によっては適語を調べるのに手間がかかるだけでなく、訳文にうまくはまらないということも起こり得ます。
  • 訳文は正確かつ、矛盾のない文章でなければなりません。技術文書には、美辞麗句や専門用語の独創的な使い方などは不要です。原文に書かれた通りに翻訳する必要があると同時に、ひとつの言葉(用語)はひとつの概念を示すようにし、その言葉と同じ意味を示すのに複数の言葉を使うのは避けるべきです。例えば「エンターキー」という語を使った場合、文章の別の箇所で「エンターボタン」または「リターンキー」と表記することは不適切です。文章全体で同じ言葉を同じ意味で使うようにしましょう。また、「run」という語(動詞)をプログラムを「走らせる/実行する」ことを示す際に使ったのであれば、「run」を他の動作を示すためには使わないようにします。
  • 元言語からターゲット言語に翻訳すると文字数が変わるので、文章量も変わってきます。字数の違いは図表やチャートのキャプションや図表中のテキスト、ページのレイアウトに大きく影響します。提出文書を受け取ってもらうため、あるいは修正作業のために所定のテンプレートに収めなければならない場合には、より一層字数の違いによるレイアウト調整が必要となってきます。

技術文書の翻訳では、用語の確認や専門用語、業界用語の適訳の確認などに時間を要することでしょう。これらの作業を省くと技術文書を正確に翻訳するという目的は達成できません。にもかかわらず、多くの時間が費やされているのは翻訳後のレイアウト調整や体裁を整える作業のように見受けられます。多くの翻訳者が、納期までの持ち時間の中で半分近くを、文字数の増減に対応するためのテキストの位置調整や図の再編成に割り当てているのです。

費用削減のためにできること

  • 技術翻訳費用を削減するためにできることの一つ目は、元の文書を整えておくことです。上述したように、ひとつの言葉がひとつの概念を示すように記述しておくとともに、使用する専門用語や略語などを多用しないように注意しておくべきです。専門用語などを使っても翻訳者はそれらに対応してくれますが、時間がかかれば翻訳費用が増えることになりかねません。翻訳者がターゲット言語で元言語の意図するところを伝えるために専門用語などの検索や確認をする作業を減らせれば、翻訳に要する時間を大幅に減らすことができるでしょう。
  • 二つ目は、翻訳作業に先立って用語集や翻訳メモリを適宜更新しておくことです。多くの技術文書は、機械翻訳あるいはコンピューター支援翻訳と翻訳者によるポストエディットで対応できるようになっています。技術文書は、標準化された文章を大量に記録している機械翻訳とポストエディットを組み合わせた翻訳手法が採用しやすい文書なのです。このような翻訳手法をとる場合、文章中に繰り返し同じ語句が出てくることは効率化の利点となります。ただし、余計な語句を読み間違えないようにしておかなければなりません。そのためにも、ひとつの言葉に持たせる意味(概念)をひとつに絞っておくことが大切です。

技術翻訳では、技術用語を他の言語に正確に置き換えるために要する特別な用語集を作っておくことが重要です。コンピューターは文中の意味を判断することはできないので、「一語一概念」を守っておくべきです。翻訳メモリの機能は用語集に似ていますが、こちらは言い回しや意味も記録しておける点が異なります。単語の羅列であっても、意味に基づいて訳語を選択したり、翻訳メモリに保存されている過去の訳文から同じ語順の文章を探して訳文にはめ込んだりすることができます。該当する言葉や言い回しが文中で一貫して使われていれば、翻訳は正確かつ的確なものになります。

さらに、文書から用語や言い回しを抜き出して用語索引を作っておけば、用語集や翻訳メモリの更新の際には役立ちます。

  • 技術翻訳費用を抑えるのに有効な方法の三つ目は、図表やチャートなどにわずかでも余白を残しておくことです。調整するスペースがあれば、翻訳によって文字数が増減しても対応しやすくなります。余白がない状態で文字数の増減に応じた対応をしようとすると、余計な手間と時間がかかります。言語により差はありますが、ドイツ語のように文字数の多い単語をつなげる成句が多い言語や、ラテン言語では一般的なアルファベットの配置とは異なる縦書きや横書きをするアジア系言語では、調整が難しくなるので注意が必要です。

このように、翻訳作業の前に準備をしておくこと、翻訳メモリや機械翻訳の利用を翻訳者と話しておくことなどにより翻訳作業に要する時間と費用を削減することができると覚えて置いてください。

Leave A Reply

Your email address will not be published.

お気軽にお問い合わせください

toiawase@crimsonjapan.co.jp