【コラム】世界的ベストセラーになった名翻訳(2)

以前、世界的ベストセラーになった名翻訳8冊をご紹介しました。他言語から日本語に訳されるものもあれば、逆に日本語から他言語に訳され、多くの読者を魅了する本もあります。紙でも電子媒体でも、母国語で世界中の文学が読めるようになるのはありがたいことです。とはいえ、文学作品の翻訳を引き受ける翻訳者は、大変な苦労をして原文の持つ言葉の美しさやニュアンス、文化的要素までを元の言語から違う言語に置き換えているのです。作家にとっては、他言語に翻訳されることで、より多くの読者に自分の作品を読んでもらうことができるようになります。人による翻訳作業に加え、機械翻訳の精度が上がり、翻訳サービスも多岐にわたるようになったことや、電子書籍の普及により、国境を越えてベストセラーとなる書籍が増えるかもしれません。

今回は、翻訳されたことで成功を収めた本と作家についてご紹介します。

村上春樹

恐らく、世界で最も有名な日本人作家の一人ではないでしょうか。村上春樹は、日本だけでなく海外でも高い評価を受けており、作品は50を超える言語に翻訳されています。「ハルキスト」と呼ばれる熱狂的なファンが世界中にいて、新作の販売開始時には書店に列ができることがメディアに取り上げられたこともあります。代表的作品である『1Q84』は日本でベストセラーになっただけでなく、フランス語版は1週間で7万部を完売しました。この作品は、42カ国語に翻訳され、世界中のベストセラーリストに掲載されています。さらに、村上春樹自身が翻訳を行うことも知られており、小説に限らずエッセイや絵本なども含め70冊以上の翻訳を手がけているとも言われています。2003年には『キャッチャー・イン・ザ・ライ』の翻訳本を出版しました。本書は、1851年に出版されたJ.D.サリンジャーによる長編小説で、青春小説の古典として有名です。日本語訳としては『ライ麦畑でつかまえて』としてご存知の方も多いでしょう。村上春樹訳のほか、橋本福夫訳(1952年)、野崎孝訳(1964年)、繁尾久訳(1967年)があるので、翻訳者による訳文の違いや訳した時代の違いを思い浮かべながら翻訳本を読み比べてみても面白いかもしれません。

村上春樹をはじめ、多くの日本人作家の作品が翻訳されて海外で出版されることで、日本文化や日本における多様性を他国の人に知ってもらう機会を作ることができるのも、翻訳の隠された楽しみと言えそうです。

近藤麻理恵

多様な日本文化を世界に広げたという点では、片付けコンサルタントの「こんまり(KonMari)」こと近藤麻理恵の『人生がときめく片付けの魔法』のヒットにも触れたいと思います。2014年に著作がアメリカで翻訳・出版(英題:The Life-Changing Magic of Tidying Up)されるとアメリカでベストセラーになり、「片付け」が社会現象として取り上げられるほどになりました。2015年には『Time』の「世界で最も影響力のある100人」にも選出され、正に時の人となったのです。今や、Kondoingあるいは彼女の名前Kondo MarieやニックネームKonMariがそのまま片付けをすることを表す言葉のように使われることもあるほど。日本国内同様、国外でも片付けを「人生を変える(Life-Changing)魔法」と位置付けたことが人気の要因とも言われています。そして、2019年1月1日から動画配信サイトNetflixで『Tidying Up with Marie Kondo(邦題:KonMari ~人生がときめく片づけの魔法~)』が配信されると、5日間に約15000冊の本が売れ、再びベストセラーリストのトップとなったのです。

J.K. Rowling

J.K.ローリングの名前を知らなくても『ハリー・ポッター』シリーズはご存知の方が多いことでしょう。このシリーズ7作品は、1997年から2007年に出版され、8本の映画も大人気。今や世界各地にテーマパークができています。シリーズ登場から20年目にあたる2017年、このシリーズが世界200カ国、79言語に翻訳され、累計発行部数は4億5000万冊を超えるという驚異的な数字をたたき出したことをAFP通信は報じていました。英語の原書から翻訳された言語の中には、学者の手による古代ギリシャ語まで含まれているそうです。ローリングは、ハリーポッターシリーズの最終巻以来5年ぶりに、初の大人向け小説『Casual Vacancy』を2012年9月に出版しました。日本語版(邦題:『カジュアル・ベイカンシー 突然の空席』)は2012年12月1日に上下2冊で発売されています。この本は、発売から6日間で37万5000冊を売り上げましたが、早くも44言語に翻訳されているので発行部数はさらに増えていると思われます。

ここに挙げた他にも、訳書がベストセラーになった著者はたくさんいます。いろいろな作家の作品を原著で読んだり、訳書を読むのでも別の翻訳者の手による作品を読み比べたりすることも言葉を考えるよい機会となることでしょう。

こんな記事もどうぞ
【コラム】世界的ベストセラーになった名翻訳8冊

Leave A Reply

Your email address will not be published.

お気軽にお問い合わせください

toiawase@crimsonjapan.co.jp