機械翻訳とポストエディットについて知っておくべき5つのこと

1950年代に初めて機械翻訳(MT)が注目されたとき、誰もここまで発展するとは想像していなかったことでしょう。ニューラル機械翻訳の導入とニューラルネットワークと人工知能(AI)の結びつきにより、MTは大きな発展を遂げたのです。翻訳業界でMTの普及が拡大するにつれ、ポストエディットの必要性が高まってきました。ここでは、MTとポストエディットを理解する助けとして、それぞれのサービスについて知っておくべき5つのポイントを紹介します。

1.機械翻訳には人の手を加える必要がある

機械翻訳の最大の特長は、その処理スピードにあります。1時間に数百万語の翻訳が可能であり、翻訳プロセスを大幅に効率化できます。しかし、機械翻訳は完璧ではありません。イディオムや口語体のような独特な表現を認識できないことも含め、機械翻訳が犯しがちなミスには、次のようなものが挙げられます。

  • 誤った句読点の使用
  • 語順の間違い
  • 性別や数の誤訳
  • 単語の訳漏れ(翻訳対象の単語が訳出されず、元言語の表記のまま残ってしまうもの)
  • 冠詞の挿入漏れや訳出漏れ、または間違った冠詞の使用

こうした機械翻訳の翻訳ミスを修正するためには人の手を加える必要があることが明らかです。そこで登場するのが機械翻訳ポストエディット(MTPE)です。MTPEは、機械の高速処理能力と人の手による正確な補正力を組み合わせることで効果的な翻訳プロセスを実現します。

MTPEでは、機械翻訳されたテキストのコンテンツの正確さ、明瞭さ、流れ、文化的な適切さなどを人間の翻訳者が重点的に確認します。

2.予算とニーズに合わせてMTPEが選択できることが望ましい

機械翻訳を行う場合には、機械翻訳に加えてMTPEについても検討すべきです。機械翻訳のみで対処できるのか、ポストエディットが必要か、必要な場合にはポストエディットも依頼できるか、ポストエディットの内容(レベル)は選択できるのかなどを把握しておくことが重要です。事前に作業内容や選択肢の有無を確認しておくことで、予算内でニーズに合ったサービスを選択することができます。翻訳会社に依頼する場合には、ニーズを踏まえてどのレベルのMTPEが最適か相談すると良いでしょう。納期と品質要件およびコストを頭に置いて検討してください。

MTPEには2つのタイプがあり、それぞれ適正が異なります。

ライトポストエディット:機械翻訳の全体的な精度を確認し、一般的な誤りを発見して修正するために最適なオプションです。以下のような場合に適しています。

• 最小限の編集で内容の確認が十分可能という場合
• 低コストで迅速に翻訳を完了させたい場合
• 内容は複雑ではなく、正確で理解ができる範囲で伝えることを目的としたコミュニケーションの翻訳が必要な場合

ヘビーポストエディット:複雑で多くの人に読まれる文書など、機械翻訳の出来を徹底的に確認する必要がある場合には、こちらを選択すべきです。以下のような場合に適しています。

• 機械翻訳に文法上の誤りが多数含まれている場合
• 翻訳対象に文化的な適切さと配慮が求められる内容が含まれている場合
• 文書の一貫性と語調において改善が必要な場合
• スタイルの変更などが必要な場合

ヘビーポストエディットを行った文章は、もともと読み手の母国語で書かれたかのような出来が期待できます。ライトポストエディットに比べると費用はかかりますが、より高い制度の翻訳を保証するものです。

機械翻訳を行った場合、ポストエディットを行うことが推奨されますが、以下の場合に限っては行わなくてもよいでしょう。

• AIによる機械翻訳のみで十分だと確信できる場合
• 内部利用文書なので基本的な翻訳があればよいという場合
• 対象文書の内容が簡単なもので、特殊な専門用語などの使用がなく、誤訳の可能性が低い場合

3.機械翻訳にはうまく機能しない言語がある

機械翻訳の限界のひとつに、言語の組み合わせによってはうまく機能しないことが挙げられます。一般的に機械翻訳は、言語同士の関連性や類似性が高い英語とヨーロッパ言語間での翻訳に適しています。逆に、英語と日本語のような類似性の低い言語間の翻訳では、機械翻訳だけでは処理が難しことが多々あります。方言が含まれている場合も同様です。また、ロシア語やトルコ語のように、構文や文法が複雑なために機械翻訳での処理が難しい言語もあります。
こうした場合でも、ポストエディットを導入すれば、言語の組み合わせに左右されることなく、最終的な訳文の正確さを確約できます。

4.MTPEはさまざまな種類のコンテンツに効果的

確かに、比較的単純で短い文章であればMTPEを省くことは可能ですし、ユーモアや皮肉などのニュアンスを考慮せずによい単刀直入に書かれた文章であれば、機械翻訳は一定の精度を保った訳文を作成することが可能です。

機械翻訳だけでは不十分な場合でも、MTPEを組み合わせることで、ほとんどの文書は翻訳できるようになります。以下のような種類のコンテンツの場合は特にMTPEが効果を発揮します。

  • 文化的配慮が必要なコンテンツ:言葉がどれだけうまく翻訳されていても、最終的な訳文に文化的配慮が欠けていれば「うまい」翻訳とは言えません。文化的に適切であることは、翻訳を成功に導く最も重要な要件のひとつであり、MTPEを行うことで、適切な表現にすることができます。
  • 公開するコンテンツ:パッケージ、製品説明、各種マーケティング資料、ウェブサイトのコンテンツなど、広く顧客の目に触れる訳文は、機械翻訳だけで済まさずにすべてMTPEを行うべきです。
  • 専門用語が含まれているコンテンツ:医療、金融、その他の製品やサービスのコンテンツを翻訳する場合は、MTPEを行うことですべての専門的かつ技術的内容が適切に示されているかを確認することができます。

5.機械翻訳はコスト削減が可能

機械翻訳は短時間での作業が可能なので、翻訳プロジェクト全体の所要時間とコストの両方を削減することができます。プロジェクトの規模や範囲にもよりますが、機械翻訳を導入することで人間の翻訳者がプロジェクトに費やす時間を短縮することができます。

また、MTPEを付けるとしても、翻訳者が全体の翻訳を行なうよりコストを低く抑えることも可能なのです。
コスト削減につながる要素としては以下が挙げられます。

  • 翻訳管理システム(TMS)を採用し、翻訳時のワークフローを整理して、タスクを割り当て、プロセスを自動化する。
  • 既存の訳文を記憶している翻訳メモリシステムを活用するとともに、大文字/小文字の表記や用語の表記揺れなどに対処するルールを作成することで翻訳プロセスを効率化する。
  • 機械翻訳を効率的に利用することで、対象言語が多い、あるいは対象範囲が幅広いといった大規模なプロジェクトを効率的に管理し、全体にかかる費用および時間を削減する。

機械翻訳の発展は目覚ましく、今では無料で使える機械翻訳ツールも登場しています。ただし、ツールによっては翻訳できる字数に制限がありますし、専門用語に対応できていないツールもあることには留意しておいてください。小規模なプロジェクトであれば、オンラインツールの利用を検討するのも一案です。ツールあるいは、翻訳会社が提供する機械翻訳サービスによっては、ある程度の字数までは無料もしくは低価格で翻訳できるものもあります。有料の機械翻訳サービスでも、トライアルが可能なものもあるので、翻訳ニーズまたはプロジェクトの規模や予算、MTPEの必要性の有無に応じて相談してみてください。

技術の進歩に伴い、機械翻訳もいまよりさらに高度なものになっていくでしょう。しかし、それは言語の専門家が翻訳にもたらす人間的な編集作業の全てに代わるものではありません。対象分野の専門知識を有する翻訳者や、ターゲット言語のネイティブスピーカーを有する翻訳会社が提供する機械翻訳サービスを活用することで、最良の結果を生み出してください。

Leave A Reply

Your email address will not be published.

お気軽にお問い合わせください

toiawase@crimsonjapan.co.jp