翻訳自動化 -AIが翻訳にもたらす変化

近年の翻訳の自動化には目を見張るものがあります。IT技術が進歩し、言語の域にまで進出してきたことによって、高効率・低コスト・高品質な翻訳が提供されるようになってきました。さらなるAI(人工知能)の導入が見込まれる現在、翻訳の自動化がもたらすメリット、自動化を可能にする技術について見てみます。

■ 翻訳自動化とは?

翻訳自動化 とは、翻訳プロセスの一部を機械処理することにより、高品質・低コストな翻訳アウトプットを短時間で提供可能にすることです。翻訳作業そのものではなく、プロセスの効率化を図るものであり、多言語化の翻訳プロジェクトやローカリゼーションなどに有効です。

翻訳自動化のメリットとしては、以下のようなことが挙げられます。

・頻繁に更新されるウェブサイトやさまざまなプラットフォームのコンテンツを適宜、迅速にアップデートできる。
・プロジェクト開始時から終了までのワークフローを自動化することで、プロジェクト管理の時間を大幅に削減できる。
・着実なスケジュール管理を行うことで納期を厳守することができる。
・効率的なワークフローに従ってファイルの送受信を行い、段階的な作業をスムーズに進行させることができる。
・不要な人の介入を減らし、プロジェクトコストを削減し、人的ミスが生じる可能性も軽減できる。
・再現性があり、数値化が可能で、かつ信頼できる作業を積み重ねることで、結果的にプロジェクトの進行を速めることができる。
・クラウド上で作業することで、作業者のタイムゾーンに関わらず作業ができるようになり、かつ作業ファイルをEメールで送受信しないことにより、セキュリティを確保できる。

■ 翻訳自動化をもたらす技術

上述のように翻訳プロセスを自動化することによって得られるメリットがある一方で、何を自動化すれば効果的なのか、自動化は簡単にできるのか――など、自動化の取り入れ方については懸念も残されています。翻訳プロセスのどの作業を自動化するかによって、複数ある方法を使い分けるのが妥当でしょう。次は、自動化を可能にする技術について紹介します。

人工知能(AI)

AIの利用が急速に拡大し、AIと翻訳自動化を組み合わせて高度なリアルタイム翻訳を実現する企業が現れてきました。このようなシステムの開発を牽引しているのは、翻訳よりITに精通している企業や団体です。例えば、米国国防高等研究計画局(US Defense Advanced Research Projects Agency: DARPA)は、長年AIの開発に関わってきており、次世代AI開発に巨額の投資を行うと発表しました。国防に関わる組織なので、AIの利用も軍事的な目的を有しています。戦地に赴いた兵士が現地語を理解するのを助ける翻訳ソフトウェアの開発を行っていますが、そこにAIを活用したのです。AI導入により、単語の意味の置き換えではなく、前後の文脈から瞬時にニュアンスまでも汲み取れる翻訳を目指しました。また、AI技術は、ソフトウェアなどが特定のタスクまたはサービスを代行するバーチャルアシスタント(AIアシスタント、またはVAと呼ばれることもある)のような一般利用向けツールの性能を高め、他言語での利用を可能にするのにも使われています。

翻訳プロキシ

Google翻訳を使って他の言語のサイトを日本語で表示したことはありませんか?「翻訳プロキシ」とは、Google翻訳やYahoo翻訳のようにサイトごと翻訳して、結果をウェブブラウザ上に表示する機能です。翻訳プロキシは、ウェブページからHTMLとテキストコンポーネントを呼び出し、文字コードを置き換える処理を省き、キューイングテキスト(queuing text、指示を受けてキューに入れられた作業待ちのテキスト)を素早く翻訳処理していきます。リクエストした時点で完全に自動でリアルタイム翻訳を行う場合もあれば、キャッシュ(プロキシ内に一時的に保存されるデータ)から訳文を呼び出す場合もあります。プロキシを利用してサイトのコンテンツを表示することが可能になったことで、動作上の技術的な制限が残る場合があるものの、表示したい言語ごとのプラットフォームやウェブサイトを作成する必要がなくなったことは、画期的です。

クラウドコラボレーション

翻訳プロセスの自動化のうち最も取り組みやすいのは、ファイルの共有にクラウドを利用する「クラウドコラボレーション」です。個々の作業をクラウドで共有することで、Eメール経由でファイルのやり取りを行うのに比べ、作業スピードが上がります。プロジェクトチームのメンバーが、自動的に段階に応じた連絡(アラート)を受け、ワークフローに従って作業に取り掛かることも可能です。プロジェクトに関わるすべての人が、ワークフローにおける作業の進捗状況やスケジュールを把握することができるので、見落としがなくなり、クラウドでワークフロー全体を管理することで、大幅な効率化を図ることができます。

国際化(Internationalization)

Internationalizationは“i18n”と表記されることがありますが、これはInternationalizationの数略語(ヌメロニム)で、単語の先頭の”I”と末尾の” n”の間に18文字あることから、便宜的に使われる表記方法です。特定の地域の言語や仕様にとらわれることなく、世界各国で共通して利用できるように、製品、アプリケーション、ドキュメントなどを開発・設計することを意味します。これは、翻訳の自動化にとっても重要な概念です。国際化することにより、コンテンツは目的言語に合わせて調整され、それぞれの内容・機能に合わせたアウトプットが作成されることになります。

CAT(Computer Assisted Translation、翻訳支援)ツール

CATツールは、翻訳プロセスを容易にしてくれるコンピュータプログラムです。繰り返し使われる文やフレーズ、およびそれらに相応する訳語を収録したデータベースを使用し、翻訳メモリ上で機能します。翻訳メモリを共有することで、翻訳者は、お互いの入力情報を利用でき、既に訳された用語をチーム内で統一して利用することが可能になります。他にも、CATツールには、手作業でやっていたプロセスの自動化や、コラボレーションツールの利用、コンテンツ全体の翻訳の一貫性の確保ができるようになるといった利点もあります。
翻訳の需要は、これからも増加し続けると思われるため、翻訳業界の競争はますます激しくなることでしょう。すでに翻訳業者(翻訳プロバイダー)のランキングには、各国の翻訳業者が名前を連ねています。グローバル化が進むにつれ、翻訳の対象となる言語が増えていることも対応が迫られる点ですが、さらに、需要は単なる翻訳に留まらなくなっています。主要な言語ペアすべてにおいて、企業ごとの特徴的な取り組みを効果的に伝えるための的確なカスタマイズ化が必要とされるのです。翻訳者も翻訳会社も、新たな技術を取り入れ、多様化する需要に対処していかなければ生き残れない時代となっているのです。

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