外国語の学習が脳を健康に?!

脳の活性化と認知症予防を目的に、いわゆる「脳トレ」が盛んですが、外国語学習が脳を鍛える上、健康にも役立つという話は聞いたことがあるでしょうか?バイリンガルになることが脳の活性化を促したり、脳の老化防止にも効果があったりとの研究が進んでいます。今日は、その効果について探ってみましょう。

脳の「実行機能」発達と活性化

The New York Times(2012年3月17日付 )に興味深い記事があります。これによると、20世紀には、バイリンガルであることは、子供の知性の発達を妨げると考えられていました。脳の言語システムに複数言語が存在することで、混乱を生じさせると考えられていたのでしょう。しかし、これが逆に脳の認識能力を高めていると、ある研究者が見出したというのです。

記事内の実験の結果、バイリンガルであることが脳の「実行機能(Executive Function)」の発達に寄与する可能性があることが示されました。「実行機能」とは、『複雑な課題の遂行に際し、課題ルールの維持やスイッチング、情報の更新などを行うことで、思考や行動を制御する認知システム、あるいはそれら認知制御機能の総称』(脳科学辞典) のことです。計画・行動の順序立て・ 注意力の切り替え(スイッチング)、つまり言語が脳内で切り替わることで思考や行動を制御する認知能力が鍛えられ、この機能の発達を促しているとのこと。バイリンガルの子供と単一言語しか話さない子供との比較調査では、会話ができるようになる前の段階でさえ、バイリンガル環境の子供のほうが、実行機能の発達が加速されたというから驚きです。

また、外国語の習得は 脳 を活性化させ、脳の健康にもよいとの研究もあります。バイリンガルは単一言語話者よりもアルツハイマー型認知症の発症が遅いことが確認されています。さらに、バイリンガルであることは、物理的な脳損傷をも緩和します。近年の脳梗塞からの生還者に対するインドでの調査(600例を対象)によると、バイリンガルの認知能力は単一言語話者の2倍もの回復を見せたそうです。苦労も多い言語習得ですが、どうやら「実利的な見返り」が期待できるようです。

欧米の外国語学習事情

日本では、小学校の英語教育が2018年4月から義務化されることになっていますが、バイリンガルもしくはそれ以上の複数言語を幼いころから学ぶ機会の多い欧米の外国語学習は、どうなっているのでしょう。

米国の各学校では言語教育に投じられる公共資金が減少しつつあり、外国語の必須単位数や外国語クラスの生徒数は減少の一途をたどっています。高等教育を受ける学生のうちの10%に満たない数しか外国語の授業を取っていないという調査結果もあります。

一方、欧州は外国語教育に対して明確な方針を打ち出しています。多文化・多言語主義を基本原理とする欧州連合(EU)は、共同体を維持するには多言語・多文化の尊重が必要不可欠と考えており、その姿勢が外国語教育に現れています。加盟国の公用語をEU公用語としており、子供たちに少なくとも1つの母国語以外の言語を学ぶよう求めてきました。2002年以降は2つの外国語の早期教育「母語プラス2言語」政策を推進しています。

国境を越えての民族移動が増加する昨今、EU以外の国民や政府にとっても(EUほどの必要性に迫られていないとはいえ)、外国語学習の価値と多言語・多文化的視点の重要性を認識することが大切になってきています。

いつからでも始められる

国際的事象により多言語でのコミュニケーションが求められる時代になった現在、このタイミングを自らの外国語学習の出発点あるいは再開の機会と捉えてみるのもよいかもしれません。さまざまな研究治験により、外国語学習が脳の発達や健康に実質的な利益をもたらすことが分かってきています。やらない手はありません。

年齢を重ねるに連れ、言語の習得は困難になるのが実情です。早いに越したことはありません。ただ、何歳になっても、努力することで 脳 によい影響を与えることはできます。思い立ったが吉日。今日から外国語学習に、あらためて力を入れてみるのはいかがでしょう。

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