アプリのローカライズにおける7つのポイント

企業がアプリケーション(アプリ)をローカライズするときには、どんなところを注意しているのでしょうか。最近では、ゲームも含めたほとんどのアプリに、より多くのユーザーに使ってもらうようにするための言語対応が施されているように見受けられます。2020年までには、世界のアプリ市場が1,889億USドルに達するとの試算もあり、アプリ開発が成長産業であることは明白です。拡大するアプリ市場は、デジタル戦略の一環としてアプリのローカライズも視野に入れた戦略を図っています。もはや、iOSであろうとアンドロイドであろうと、世界市場で生き残るには、あらゆるアプリのローカライズが必要なのです。

もちろんアプリユーザーは英語を理解できる人ばかりではありません。そして、多くの人は英語が読めたとしても母国語でアプリが利用できることを望みます。デジタルコミュニケーションでは英語が公用語のようになっているとは言え、アプリを利用するときには楽な方が好まれます。実際、アプリストアに関する分析を行っているDistimoが2012年10月に発表した調査“The Impact of App Translations”によれば、iPhoneのアプリのダウンロード数を比較したところ、ローカライズされたアプリは当該国で128%多くダウンロードされたそうです。その結果、各国での収益は26%アップ。しかも、この現象がたった1週間の出来事だったことは衝撃的です。アプリのローカライズがダウンロード数の増加につながるのは確実と言えそうです。

このように重要さが増しているアプリのローカライズですが、実作業はどのような点に注意して行われているのでしょうか。以下に7つのポイントを挙げておきますので、アプリのローカライズ作業を進めるときの参考にしてみてください。

1. テキスト翻訳は文化的背景を考慮して的確に

これはアプリの翻訳以外にも共通することですが、ターゲットユーザーの文化的背景を知り、的確に訳すことが重要です。また、アイコンや色、イメージ、サインなどは相手が同じように受け取るか分かりません。ローカライズ作業がスムーズに進められるように、ターゲット市場の文化を調べるとともに、世界共通で理解されるデザインを採用する必要があります。特に、アプリ内にアイコンや画像を入れる場合には、注意が必要です。

2. 多言語に対応できる融通性の高いデザインを意識

アプリの翻訳ではテキストの長さにも注意が必要です。日本語を他言語に翻訳した場合、文法構造や単体で意味を持つ漢字の特徴などにより長くなる傾向にありますが、アルファベットが同じヨーロッパ言語に翻訳する場合には、短くなることもあります。翻訳する言語ペアによってテキスト長やスペースの取り方も変われば、表記する方向も変わってきます。最初から多言語化することを意識した構造になっていないと、テキストが表示可能な幅からはみ出してしまうことも。デザインまで意識して字数制限などを設けるようにしましょう。

3. メタデータの翻訳には細心の注意を

アプリがターゲット市場で成功するためには、認知度を上げる必要があり、そのためには検索で上位に表示されるようにしなければなりません。そこで重要なのが、アプリのタイトル/名前、簡単な説明、キーワード、スクリーンショット、動画のプレビュー、ウェブサイトのURLといったメタデータです。メタデータがユーザーに直接的な印象を与え、該当するアプリをダウンロードするか決めさせる鍵となるので、その翻訳には細心の注意が求められます。

4. リソースの表出化(Externalization)を活用

アプリの場合、翻訳したテキストがどのように表示されるか分かりにくいかもしれません。イメージファイルやテキスト、動画などの翻訳を必要とするデータファイルは、アプリのコード内に直接埋め込むのではなく、外部ファイルとされます。この場合、それぞれのテキスト文字列に固有の名前と翻訳値が付けられ、アプリを売り込みたい市場の国の言語ごとの翻訳ファイルが作成されます。この手順は、ターゲット言語ごとのリソースファイルの更新版を作成するときや、リソースファイルをコードで呼び出すときなどに活用されます。

5. アプリストアの最適化(ASO)

出来上がったアプリは、ひとりでも多くのユーザーにダウンロードして欲しいものです。アプリストアの検索順位で上位に表示させるために、モバイルアプリおよびアプリストアの情報を最適化するプロセスはApp Store Optimization(ASO)と呼ばれます。ASOで重要なことは、ランキングアルゴリズムによってキーワードがきちんと識別されること。iOSアプリストアでのダウンロード数の65%が相互関連性のあるトラフィックと検索によって行われたことを鑑みれば、ASOの最適化がアプリの可視化に一役買っているのは明らかです。ただし、ASOを使用するときには、正しい検索語を選択し、ターゲット市場にあわせてコンテンツを最適化していることが大切です。

AOSの効果の一例ですが、あるiPhoneのアプリのキーワードをローカライズしたことによって、ダウンロードが767%も増加したとの報告もあります。このアプリは、中国、ロシア、日本、フランス、そしてイタリアを含む世界中からアクセスされ、1ヶ月の間に23,000ダウンロードされました。このうちの約10%のユーザーは英語圏外からだったことも判明しています。的確なキーワードを該当言語でも適切に入れ込む必要があるのです。

6. 擬似ローカリゼーション(Pseudo Localization)で確認作業

アプリが公開できる状況に仕上がったかの確認は、擬似ローカリゼーション(Pseudo Localization)で行います。リソースファイルに機械翻訳したテキストを流し込み、テキストの長さやハードコード化された文字列、異なる文字セット、翻訳すべきでない文字列など全体を確認。ローカライズし忘れたハードコードや文字列を検出するのにも役立つので、実際のローカライズを行う前にミスを修正でき、プロセスの遅延や追加でコストが生じることを避けることにも役立ちます。

7. 最終テスト

訳を含むすべてのプロセスが完了したところで必要となるのが、最終的なローカライズの言語テストと実行試験です。テスト環境にはさまざまな設定が含まれ、文字列や改行、翻訳テキスト、ユーザーインターフェース(UI)の表示など、あらゆることを検証し、潜在的なエラーを見つけ出します。さらに、アプリのローカライズがすべて完了したことが確認できたら、品質保証(QA)テストです。QAの専任者がアプリをチェックします。

現在、iOSおよびAndroidのアプリは500万を超えて、増え続けています。競合ひしめく中、アプリの画面にローカライズされた母国語で必要な情報が表示されると、コンテンツ機能や使用法などが簡単に理解できるのでダウンロードする可能性は高くなります。世界人口のうち、英語を解するのは約20%だけと言われているので、アプリの新規顧客開拓にはローカライズが不可欠です。
世界中でアプリが公開され、世界各地の市場でダウンロードされたアプリが世界中の人に共有される。アプリを複数の言語にローカライズする作業は、とても困難ですが、それに見合う効果は得られるものだと思いませんか。

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