ビジネスに不可欠な異文化コミュニケーション

新しい環境にビジネスを展開する場合、企業はターゲット市場の消費者またはユーザーに受け入れられるように、その市場の状況に合わせて事業の調整を行う必要があります。経済発展が進むアジア諸国への注目が集まっており、米投資銀行のゴールドマン・サックス社がBRICsに続き経済成長が期待される国々として提唱する「Next11(ネクスト11)」によれば、経済規模が世界最大となる可能性が最も高い11か国のうち6か国はアジア諸国となっています。しかし、文化の異なる市場にビジネスを展開するには、ターゲット国の言語を習得するだけでなく、その国の文化を深く理解しておくことが不可欠です。特に、西洋諸国の企業がアジア諸国でビジネスを展開する際には、文化の違いを理解し、ターゲットとする市場に関して深く洞察しておくことが不可欠です。

直接的な物言いを避ける傾向

英語に代表される西洋言語の話者が直接的な表現を好むのに対し、日本を含むアジア言語の話者は直接的表現よりも婉曲的表現や「オブラートで包んだ言い方」を好む傾向があると言われています。東洋的な文化圏では一般的に、直接的な言い方をすること、意見や感情をストレートに示すこと、立場を超えて発言することを避けることが多いのです。問題について話し合いをする場合でも物事をはっきり言わないので、西洋的な考え方からすれば自信がないのでは?と思われるかもしれません。しかし、東洋的な考え方では、他者との対立や混乱させることを避けるため、自分の意見を主張することに抵抗を持ち、曖昧な表現で話を進めようとするのです。

ただし、「本音と建て前」というのもあるので、言われた通り、文字通り鵜呑みにすることができないのが難しいところです。西洋的なコミュニケーションでは、「言わないと分からない」のを前提で話すので、話したこと・聞いたことは言葉通りにとらえるでしょう。しかし、東洋的なコミュニケーションでは、それが成り立たないことがあります。日本人は曖昧な表現を好むだけでなく、結論を後に回し、その上で聞き手に言外の意味を察することを求める傾向があります。これは、「空気を読む/読めない」「忖度」などの言葉にも表れていますが、外国人には理解し難いことです。さらに言えば、日本語での会話は主語がなくても成り立ちますが、それはお互いに何が主語かを察し合いながら話をしているからです。これも外国語ではあまり見られない特徴です。一方の欧米言語の話者は直接的でロジカルな表現を好み、結論を先に話し、意見の違いも明確にします。そして、聞き手には言葉(文脈)によって内容を理解することを求めますので、言外の意味はありません。

国際的なやりとりは英語で行われることが多いとしても、話者のコミュニケーションスタイルには母国語での思考パターンの影響を受けることもあるでしょう。他国でビジネスを展開する際には、双方のコミュニケーションスタイルの違いを理解しておくことが必要です。

異文化コミュニケーション

そもそも、異文化コミュニケーションとは、文化的背景が異なる者同士によるコミュニケーションです。異文化圏でビジネスを成功させるには、言語に留まらず、ターゲット国の文化や歴史、慣習を知り(知識)、それを踏まえた対応(行動)を取らなければなりません。自国で「普通」のことは、他国では「普通」ではない。そして、受け入れられることも自国と同じではないと覚えておく必要があります。もうひとつ、文化とともに大切なのが価値観への理解です。例えば「品質」。製品・サービスの品質およびその重要性については国によって認識が異なるもののひとつです。日本企業の考える「品質」レベルが、現地従業員の考えるレベルとは異なるのはよくあることです。質よりも普及することを重視し、質の高い製品よりも廉価でより多くの人が購入しやすい製品の方が売れると現地従業員が考えているような場合、いくら「品質は大事だ」と日本企業が言っても理解されない可能性があります。しかも、この「品質」の高低の基準がまちまちである可能性も見過ごせません。そもそも「品質」の定義から異なっているかもしれないのです。

国が違えば文化や価値観が違うのは当然です。言語能力とコミュニケーション能力は、深く関連するものではありますが、言語さえできれば異文化コミュニケ―ションもできるというものではありません。お互いの文化や歴史、慣習などに基づく考え方や価値観の「違い」を意識しなければ理解は得られないのです。しかし同時に、違いだけを見るのではなく、似ている面もあることを認識しておかなければ本当の理解は得られません。自分を知り、相手を知る。自分の国とターゲット国の文化、国の特性、ビジネススタイルなどを総合的に見ていくことが異文化コミュニケーションの出発点です。

最後に、西洋諸国から見るとアジア諸国は「アジア」と一言でまとめられることも多いようですが、アジアの中でも国によって言語も文化もさまざまです。ターゲット市場の言語、文化を理解することなくビジネスを展開しても、失敗するか、資金と時間を無駄にする危険性があります。ビジネス市場が拡大し、人の流れも増加する一方の昨今、ターゲット国に合った戦略的な異文化コミュニケーションを図り、ビジネスの成功につなげてください。

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