誤訳がもたらす多大な影響

いざ翻訳を依頼しようとする際に、間違った翻訳がもたらす結末について考えることはあまりないかもしれません。しかし誤訳が生じた時にこそ、優れた翻訳、質の高い翻訳の重要性は身に染みて分かります。ひとつの間違いがメッセージ全体の意味を変えてしまうような場合にはことさらです。​たったひとつのミスが、誰かの健康に多大な影響を及ぼしたり、ビジネスに多大な損失をもたらしたりすることがあるのです。

​この記事では、有名な翻訳ミスをいくつかご紹介します。極端ではありますが誤訳は時に、重大な結果をもたらします。

翻訳ミスから生まれた火星人の概念

​イタリアの天文学者ジョヴァンニ・スキアパレッリは1877年に屈折望遠鏡で火星を観測しました。そして地表全体に線状の模様を発見し、発表の際にイタリア語で「canali(溝)」と記述しました。数年後それは英語で「Canal(運河)」と翻訳され、科学者たちはこのような水路があるからには火星には生命が存在すると考えたのです。イタリア語のCanaliは、必ずしも人工の構造物ではなく自然に形成された水路も含めた一般的な言葉であるにも関わらず。​この誤訳はやがて人々の知るところとなりましたが、その後も火星の生命体についての探求は長年にわたって盛んに行われてきました。

安全保障上の脅威についての認識を生んだ誤訳

​1956年11月18日にソ連のニキータ・フルシチョフ第一書記がロシア語で発した言葉が「我々はあなたがたを埋める」と誤訳された事例も翻訳の正確さの重要性を物語ります。​冷戦のさなかにあって、この発言は米国に対する核攻撃の示唆と受け止められました。​フルシチョフがアメリカをけん制していたのは事実ですが、内容はその翻訳ほど不吉なものではありませんでした。実際のところの意味合いは「我々の体制はあなたがたの体制よりも長続きする」といったものだったのです。

ジミー・カーターの通訳による恥ずかしい間違い

​カーター大統領が1977年にポーランドを訪問した際、通訳者は屈辱的とさえ思えるミスを立て続けに犯しました。​通訳のスティーブン・シーモアは、カーターの「私がアメリカを発った時」という発言をポーランド語で 「私はアメリカを捨てた」と訳し、さらに「未来への希望」を「未来への色欲」と訳しました。シーモアはポーランド語を知っていましたが専門的な翻訳をなしうるレベルではなかったのです。ソース言語とターゲット言語の両方のネイティブスピーカーである言語のエキスパートがいかに重要かを示す良い例でしょう。

医療通訳のミスによる健康被害

​最も重大な医療通訳ミスのひとつは1980年、18歳のウィリー・ラミレスが昏睡状態でフロリダ州南部の病院に搬送された際に起こりました。​家族は医療スタッフにラミレスの状態を「毒物を取り込んでしまった状態(=intoxicado)」とスペイン語で説明。しかし通訳者がそれを「興奮した状態/酔った状態( =intoxicated)」と英語に誤訳したため、医師はアルコールなどの過剰摂取として治療しました。脳出血を起こしていた彼は治療が遅れたために四肢麻痺になってしまい、訴訟を起こした家族が7100万ドルの和解金を受け取るという結果となりました。

広告コピーの誤訳

2009年、HSBC(香港上海銀行)は​、国際的なマーケティング・キャンペーンには正確な翻訳が欠かせないということを大きな代償とともに学びました。同行はかねてより 「Assume Nothing(何も想定しない)」というコピーで自行の投資戦略を英語圏の顧客に浸透させていました。しかし、​広告キャンペーンの国際的な展開を始めた際、あろうことかそのコピーを「何もしない」と誤訳させてしまったのです。​誤訳されたメッセージを払拭するため、新規市場で共感されるコピーを用いて行ったリブランディングに同行は1000万ドルを費やさなければならなかったそうです。

ちょっとした誤訳といっても、その影響は計り知れません。​高品質の翻訳を提供する体制を整えた翻訳会社と提携すれば、異文化に配慮したミスのない翻訳で世界への発信も行えるでしょう。

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