動画の翻訳・ローカライズに使われる字幕、ナレーション、吹き替え

動画の翻訳・ローカライズに使われる字幕、ナレーション、吹き替え

オンラインで公開される動画が激増するにつれ、目立つ動画を制作することは難しくなっています。特にグローバルなレベルで多くの視聴者を獲得することは簡単ではありません。

動画コンテンツを海外の視聴者に届けるには適切な翻訳・ローカライズが必要です。ここではローカライズする際の、字幕、ナレーション、吹き替え、という3つの手法について解説します。

字幕

字幕とは画面の下に表示される発話内容の翻訳文です。元の言語が分からない視聴者のために動画の音声はそのままに、字幕を加えます。字幕制作には時間がかかりますが、現在では機械翻訳ツールなどを活用することで、より効率的に作業を進めることができるようになっています。

動画の視聴時間が長くなるにつれ、字幕の普及も進んでいます。字幕の主な利点は以下の通りです。

  • どこでも視聴が可能に
    元言語で動画を理解できる視聴者でも、字幕を活用すれば、音声が出せない場所でも動画を楽しむことができます。
  • 検索エンジン最適化(SEO)の強化
    テキスト情報を動画に組み込むことでSEO対策にもなり、視聴者が動画を見つけやすくできることも字幕の効果のひとつです。
  • 費用対効果
    多くの企業にとって、字幕はナレーションや吹き替えより予算的にみて現実的です。字幕翻訳会社を探す際には、あらかじめローカライズを予算内で進められるか、詳細な料金の見積もりを依頼しましょう。

このように様々なメリットのある字幕ですが、使用する際には、以下のような点に留意する必要があります。

  • 文字数 字幕制作の課題のひとつは文字数です。通常の文書翻訳と同じ文字数では、視聴者は字幕ばかりを追うことになり、画面上の他のテキスト要素や映像に注意がいかなくなります。それを避けるため、意味を保ったまま文字数を削っていくことが求められます。字幕翻訳の専門業者であれば、意味を保ちつつ、快適に読める簡潔な字幕に仕上げてくれるでしょう。
  • 字幕の区切り もうひとつの課題はオリジナルの音声のどこからどこまでを1枚の字幕にするかということです。この、原文を区切っていく作業は「ハコ切り」「ハコ書き」などと呼ばれます。字幕は通常最大2行までで、1行あたりの文字数も媒体や言語によって上限があります。また、1秒あたりに快適に読める文字数・単語数なども言語によって異なるため、それらに配慮したハコ切りが、映像や音声に集中して動画を視聴してもらう上で不可欠です。
  • タイミング 字幕が音声に同期していなければ視聴者は違和感を抱きます。字幕の開始点と終了点を定める作業(通称:スポッティング)を精緻に行うことで、対象言語の視聴者に、原語を聞きながら内容を理解できたような感覚を持ってもらえます。
  • 逐語訳と意訳 上述のとおり字幕には様々な制約があることから、内容や場面によっては、単語レベルの正確さより全体のメッセージや意図を上手く伝える翻訳が望ましい場合もあります。字幕翻訳者には文脈を踏まえた柔軟な翻訳が求められるのです。

ナレーション

ナレーションは、ナレーター/声優が読み上げた音声を動画に同期させるものです。一般的にエンターテイメントやマーケティングコンテンツよりも、ドキュメンタリーや教育動画で多用されます。

対象言語でナレーション収録することのメリットには以下のようなものがあります。

  • 分かりやすさ ナレーションがあることで、映像だけでは分かりづらい内容や文脈が視聴者に効率的に伝わります。ローカライズ版でもナレーションを音声収録して入れることで視聴者はより深く内容を理解でき、視聴者層もより幅広くインターナショナルになるでしょう。
  • 共感 ナレーションは物語性を高めるために用いられることもあります。ナレーションを字幕翻訳するのではなく、対象言語のナレーターに語らせることで、視聴者はより動画に深く共感できるようになります。
  • メッセージ性の強化 声の力で発信したいメッセージのイメージをよりハッキリと伝達できます。翻訳文を読み手それぞれの受けたイメージの解釈に任せてしまうのではなく、ビジネスの目指すトーンのナレーションで、より印象的に発信することができます。

ナレーションについては以下のような点に留意する必要があります。

  • 声優のキャスティング 声優のキャスティングは、動画がどう受け止められるかに直接関わります。男性か女性、年代、声質など、どのようなナレーションが望ましいか慎重に検討しましょう。各国の幅広いナレーター/声優が登録する翻訳会社に音声収録までを依頼することで、動画の効果的なローカライズが可能になるでしょう。
  • ナレーションのトーン セリフの吹き替えと比べ、ナレーションはより中立的な語りとなることが一般的ですが、全体的な語りのトーンは決めなければなりません。専門的な雰囲気にするのか、ぬくもりやワクワク感を表現するのか、また、語りのスピードなどによっても、動画の伝わり方は全く変わってきます。
  • 用語の発音の仕方 固有名詞、略語、製品名など翻訳できない単語がナレーションに含まれる場合があります。そうした単語に関しては、あらかじめ読み方の指示しておくことが大切です。

ナレーション原稿 台本が直訳や逐語訳であれば、ナレーションをオリジナル版のタイミングに合わせられない可能性があります。したがって翻訳台本は、長さや語順を調整してローカライズする必要があります。ナレーション原稿を適切にローカライズするには、映像翻訳の専門性を持った翻訳サービス会社を利用することが肝要です。

吹き替え

吹き替えは字幕やナレーションに比べ、費用もかかり難易度も高くなりますが、吹き替えが入ることでターゲット視聴者への効果的な訴え掛けが可能になります。吹き替えでは、声優が画面上の人物に合わせて台本を読み、その音声をオリジナルの音声に置き換えます。字幕が好まれる国や地域もありますが、吹き替えがより好まれる国や地域は少なくありません。

吹き替えのメリット

  • 映像に集中できる 字幕の文字を読んでいると映像に集中できないという人もいます。吹き替えであれば、視聴者は文字に気を取られることなく、映像全体に集中することができます。
  • 親近感 登場する人物が視聴者のわかる言葉で話していると、親しみを覚えたり、細やかな性格を感じ取ったりするものです。海外でのプロモーションに、ローカライズした動画を活用したい場合などには吹き替えを上手く活用するとよいでしょう。

吹き替えをする際には以下のようなポイントに留意します。

  • 声優のキャスティング ナレーションの声優/ナレーターのキャスティングと同様に、吹き替え声優のキャスティングもローカライズの成功に大きく影響します。オリジナル版に登場する人物の口の動きに合わせ、感情を表現する必要があるため、吹き替えには高度な技術が求められます。
  • 吹き替え台本 優秀な声優をキャスティングするだけで吹き替えがうまくいくわけではありません。声優がうまくオリジナル版の話者に合わせて読み上げられる台本が必要なのです。吹き替え翻訳のプロが携わることで初めて、あたかも画面上の人物が話しているかのような吹き替え版の動画制作が可能になるのです。
  • 収録スタジオ クオリティの高い吹き替えを収録するには、サウンドエンジニアがいて設備の整ったスタジオを利用するのが理想です。動画のローカライズに吹き替えを取り入れる場合、収録の手配を含む包括的なプロジェクト管理ができる翻訳会社を選びましょう。
  • 編集作業 吹き替えでは編集作業も重要です。動画編集者が、不要なリップノイズの削除やタイミング調整、映像との同期などを行います。編集作業の時間を十分に取るという意味からも、プロジェクトの適切な管理が求められます。

どの手法を採用するか

「字幕」、「ナレーション」、「吹き替え」。これらはすべて動画の翻訳・ローカライズにおいて有効な手法です。どれを用いるかを決める際には、以下のようなポイントを考慮します。

  • ターゲット市場 どの手法を用いるかを決定する上でまず考えるべきは、ターゲット層への訴求力の大きさです。例えば、その地域で吹き替えが好まれるのであれば、積極的に吹き替えを取り入れるべきでしょう。こうした情報は市場調査を行うことによって得られます。
  • 動画の目的 動画の目的が何であるかを明確にすることも判断基準となります。教育動画であれば、ナレーションの部分を外国語のナレーションにローカライズし、エンターテインメント性の強いものであれば、適宜、吹き替えや字幕などを使い分けます。
  • 動画の再生環境 視聴者がどのような環境で動画を再生するかということも重要です。テレビやスマートフォン、タブレットなど、それぞれのデバイスに適した手法があるので、市場調査で得られたターゲット層の視聴パターンを判断材料とします。
  • 内容の複雑さ 専門性の高いコンテンツは、吹き替えには不向きなことがあります。また、画面上に文字情報が表示される動画では、字幕を加えると、文字だらけになってしまう可能性もあります。

言語サービスプロバイダの利用

ローカライズ戦略を立てられたら、次に行うのが言語サービスプロバイダ(LSP)の選定です。以下のような基準で選びましょう。

  • 字幕、ナレーション、吹き替えのすべてへの対応 いずれの手法を取り入れることにしたとしても、字幕制作と音声収録の双方に関する高度な専門性を持つLSPを利用すべきです。偏りのある会社では、ローカライズの可能性が狭められかねません。
  • 多くの言語ペアへの対応 話者人口の多い言語から希少言語までに対応できるLSPであれば、実績も豊富で、将来新たな言語のローカライズをすることになった場合にも対応してくれる可能性が高いでしょう。
  • 包括的な業務体制 動画のローカライズを行う際、LSP側が、スケジュール管理や作業リストの作成から、新規市場での動画のプロモーションまで、プロジェクトを包括的に管理し遂行することが望ましいでしょう。
  • 動画以外のローカライズも対応 動画のローカライズ戦略と、動画以外の要素・コンテンツのローカライズ戦略がバラバラであってはなりません。Webサイトやその他のマーケティングツールなど、幅広いローカライズが可能なLSPを選びましょ。

動画のローカライズを行う場合、仕上がりを左右するいくつもの決定を下さなければなりません。字幕制作や吹き替え版制作を専門的に行うことのできる映像翻訳・ローカライズ会社を利用することで、様々な可能性を吟味して目的に適った戦略を策定することができるでしょう。

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